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広島高等裁判所 昭和56年(ネ)387号 判決 1982年9月20日

控訴人(被告)

大高京

ほか一名

被控訴人(原告)

多田政直

主文

原判決を次のとおり変更する。

控訴人らは被控訴人に対し、各自金三六〇万七六六二円及び内金三二五万七六六二円に対する昭和五二年八月五日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。被控訴人のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審を通じこれを三分し、その一を控訴人らの、その余を被控訴人の各負担とする。

事実

控訴人らは、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、「本件控訴を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも控訴人らの負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠の関係は、控訴人らが当審における控訴人大高京本人尋問の結果を援用したことを附加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

理由

一  原判決理由第一項ないし第三項の説示を、次のとおり改め、附加したうえ、これを引用する。

1  原判決七枚目表七行目の「原告本人」から九行目の「措信できず」までを「原審における被控訴人、原審及び当審における控訴人大高京各本人尋問の結果によれば、次の事実が認められ、前掲甲第四号証の二並びに右被控訴人及び控訴人各本人の供述中この認定に反する部分は採用できず」と改める。

2  同七枚目裏一〇行目に「信号待ちのため停車し、青信号で発進し、」とあるのを「交差点内に約」と、同八枚目表三行目の「四〇」を「三〇」と各改め、同四行目に「赤信号を認識することなく」とあるのを削る。

3  同八枚目表一〇行以下同九枚目表三行目までを次のとおり改める。

「ところで、交差点に進入した時点において、被控訴人及び控訴人大高の双方が、それぞれ自己の進行方向の信号が青であつた旨主張し、前記本人尋問では、それぞれ自己の主張に副う供述をしているが、本件で取調べた全証拠によつても、右供述のいずれが真実であるかを決定するに足りない。すなわち、前掲甲第二号証の一及び弁論の全趣旨によれば、控訴人大高は本件事故について業務上過失傷害被疑事件として取調べを受け、不起訴処分となつたことが認められるが、そのことは、或いは同控訴人が交差点に進入した時、信号が赤であつたことを証明できる確実な証拠がなかつたためではないかということを推認させるだけのことであつて、それ以上に、信号が青であつたということまでを何ら裏付けるものではない。他方、被控訴人は、交差点前で赤信号で停止し、青信号になつたので発進したところで事故にあつた旨供述しているが、前掲甲第四号証の一によれば、本件事故については被控訴人も道路交通法違反被疑事件の被疑者として取り扱われていることが認められ、その他事故現場の道路状況、負傷の部位、程度等に照らすと、右供述はにわかに措信し難い。これを要するに、本件事故当時、いずれの進行方向の信号が青であつたかを確定できる証拠はないので、被控訴人及び控訴人大高の双方が信号を確認せずに交差点に進入したものといわざるを得ない。そうして、車両は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない(道交法三六条四項)にもかかわらず、本件事故は被控訴人及び控訴人大高の双方が右義務を怠つたため発生したものというべきであつて、前記認定の道路状況及び交通規制等に鑑みると、双方の過失割合は、控訴人大高が六割、被控訴人が四割とするのが相当である。」

4  同九枚目裏五行目の「六〇日」を「六七日」と、同一〇枚目裏六・七行目の「二〇万円×〇・三×四・三六四三」を「二〇万円×一二×〇・三×四・三六四三」と各改める。

5  同一一枚目表二行目の「であるが、」の次に「前記被控訴人の過失を斟酌すると、控訴人らに請求できる損害金額はその六割に当る五五八万二三七九円となるところ、」と加え、同三行目の「六九七万九二四九」を「三二五万七六六二」と、同五行目及び六・七行目の「七〇万円」を「三五万円」と各改める。

二  以上によれば、被控訴人の本訴請求は、控訴人らに対し各自三六〇万七六六二円及び内金三二五万七六六二円に対する本件事故発生の日の昭和五二年八月五日から支払ずみに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において正当であるから、これを認容し、その余を失当として棄却すべきである。

三  よつて、これと異る原判決を右趣旨に従い変更することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条、九二条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 熊佐義里 土屋重雄 大西浅雄)

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